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μg/mlであり、末梢血レベルにおいては僧帽弁狭窄症患者とコントロール群間に有意差を認めず、また僧帽弁狭窄症患者においては末梢、右房、左房間で有意差を認めなかった(図4)。
4. 僧帽弁狭窄症患者の左房血のFPA値およびTAT値は、各々、左房径、平均僧帽弁圧較差、僧帽弁口面積とは有意な相関関係を示さなかった(表2)。

 

考察
血中のトロンビンは、フィブリン、アンチトロンビンlll、トロンボモジュリン、ヘパリンco−factorllなどと早期に結合して失活してしまうため、直接血中のトロンビン活性を測定することは不可能であるが、最近、トロンビン生成、すなわち凝固活性のマーカーとしてTATやFPAが用いられてきている3)。今回これら分子マーカーを用いて、僧帽弁狭窄症患者の左房内における凝固亢進状態について明らかにした。
僧帽弁狭窄症においては、左房の拡大により左房内に血流のうっ帯が生じ、左房内の凝固活性の亢進が生理的凝固阻止因子による凝固活性阻害ならびに二次線溶能を越えると、血栓が形成されるものと推測されている。僧帽弁狭窄症の凝血学的マーカーについては、矢坂らは心腔内血栓を有さず脳塞栓症の既往のない僧帽弁狭窄症群では健常者群に比し末梢血のFPAは高値を示すが、D−dimerは有意差を認めなかったと報告しており7)、本研究の末梢血レベルでの結果と同様であった。一方、心房レベルでの凝固活性の検討は我々の研究が初めてであり8)、本研究により僧帽弁狭窄症患者における左房血のFPAおよびTAT値は末梢血や右房血に比し有意に高値を示し、抗凝固療法管理下においても僧帽弁狭窄症患者の左房内の凝固能が亢進していることが明らかになった。

 

 

 

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